2018年08月20日
全国各地で取り組みがはじまっている「働きやすい職場宣言」。
働く環境をより良いものにしようと取り組む事業所が「宣言」し、自治体がそれを公表する制度です。
求職者は安心して働ける事業所を見分けるひとつの指標として、各地で広がりつつあります。
その有無や内容などは各地域によって異なりますが、今回は東京都が行う「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」事業を例に、どのようなものか見ていきましょう。
福祉に携わる人材の確保は依然として厳しい状況にあります。東京都福祉保健財団のホームページによりますと、平成28年度の東京都の有効求人倍率は、介護関係職種で5.86倍となっており、全国平均(2.68倍)より高い値となっています。
一方で、福祉の職場を離職した人の多くが「法人・事業所の理念や運営の在り方に不満があった」「収入が少なかった」「将来のキャリアアップが見込めなかった」「労働時間・休日・勤務体制が合わなかった」「専門性や能力を十分に発揮できない仕事・職場だった」などの理由で前の職場を辞めている現状があります。(出典:社会福祉振興・試験センター「平成27年度社会福祉士・介護福祉士就労状況調査」)
もし事前に事業所の情報を十分に得てから入職していれば、上記のような理由での離職にはつながらなかったかもしれません。
こうした入職後のミスマッチを防ぎ、職場への定着率を高めることを狙いとしたのが、東京都が行う「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」事業です。
この宣言をしている事業所は、人材育成、キャリアパス、ライフ・ワーク・バランス、職場風土など「働きやすさ」に関する情報を公表しています。そのため、求職者は勤務条件や職場環境などを吟味し、自分に合った事業所を選択することができます。
東京都では「働きやすい福祉の職場ガイドライン」を策定し、採用、人材育成、仕事の評価と処遇、ライフ・ワーク・バランス、職場環境・風土に関する5つの項目を明示しています。そして、このガイドラインを踏まえた職場づくりに取り組む事業所を「TOKYO働きやすい福祉の職場事業所」としてサポートしています。
宣言事業所の情報は、東京都の福祉人材に関する総合的な情報サイトを通じ、広く発信されます。
サイトでは、求める人材像をはじめ、有給消化率、在職職員の年齢構成など、求人票などでは知り得ない情報も閲覧できます。これらの情報から、求職者はあらかじめ自分に合いそうな事業所を吟味して、納得して面接にのぞむことができるのです。
求職活動を行うと、情報収集などに思いのほか時間がかかるものです。事前に事業所のニーズやカラーを詳しく知ることができれば、効率の良い求職活動を行えるというメリットがあります
福祉や介護の仕事を目指す学生にとって、初めての職場を選ぶのは少なからず不安を伴うものではないでしょうか。また、転職や再就職を目指す社会人にとっても、自分にとって最適な職場を選びたいという思いは共通のものでしょう。そんな求職者にとって「働きやすい職場宣言」は事業所を選ぶひとつの指標となるのではないでしょうか。
東京都の事業においては、宣言を行う事業所は書類や現地確認などで事実関係を確認し公表されるので、大きな安心材料となります。
サイトでは給与額や各種休暇制度、夜勤体制にいたるまで、面接では直接聞きづらいことも閲覧できます。給与に関しては基本給のほか、支給される手当額なども見ることができるので、入職後の生活をイメージしやすくなります。
また、仕事と育児・介護の両立に向けた取り組みの有無や内容なども公表されており、結婚や出産・介護など自身のライフステージが変わっても働き続けることができるかどうかの目安になります。
宣言を行い、ガイドラインに取り組む事業所は「職場をより良くしたい」という意識をもって参加しています。
「働きやすい職場宣言」が、事業所と求職者とを結ぶ手助けとなることが期待されます。