「朝早く目覚めてしまう」「夜に眠れない」など、睡眠のことで悩みを抱える高齢者は少なくありません。また、認知症により昼夜逆転といった症状があらわれる場合もあります。
今回は、認知症と睡眠の関係についてご紹介します。
高齢者が抱える睡眠の悩み
一般的に、高齢になるにつれて睡眠時間が短くなり中途覚醒が増えます。
健康的な成人の睡眠時間は6時間から7時間程度といわれていますが、年齢を重ねるほど、睡眠に変化が生じ、睡眠時間は短くなります。しかし、若い頃からの睡眠習慣があるので、睡眠時間が短くなることで、「不眠症なのかもしれない」と心配してしまうケースがあるのです。
例えば、排泄の失敗が不安で夜中にたびたび起きてしまい、不眠につながることがあります。
その他にも、関節リウマチなどの痛みを伴う疾患や湿疹などの痒みを伴う疾患が原因となり、安眠できないこともあります。このような病気による睡眠障害であれば、適切な治療が必要です。服用している薬の副作用が原因となる場合もあります。また、精神的なストレスも眠りにくさの原因になります。お悩みの方は、医師に相談しましょう。
認知症と睡眠の関係とは
認知症を患っている方の中には、昼夜逆転の睡眠障害が現れることがあります。夜、なかなか寝付けない入眠障害や、眠りが浅くて何度も起きてしまう中途覚醒に悩んでいる方もいます。
不眠は認知症が原因で生じる中核症状ではありません。しかし、認知症になると、環境の変化に対応しにくくなり、物忘れなどの認知症状によって不安感が増すことで、夜間の睡眠が妨げられ、昼夜逆転につながることがあります。
夜間、気持ちよく眠れない原因はどこにあるのでしょうか。
例えば、レビー小体型認知症の方に現れやすい幻視は夜間に生じやすいため、そのことによる混乱や不安から眠れない場合があります。また、認知症の中核症状であり、自分がいる場所や時間などがわからなくなる見当識障害も睡眠を妨げる原因となります。見当識障害によって自分の居場所がわからなくなり、不安だから家のなかで家族を探し歩きます。このとき、抑制的な対応をすると寝付けない高齢者を混乱させてしまい、さらに眠れなくなってしまう可能性があります。
環境改善など、家族のできる眠りのお手伝い
認知症高齢者の昼夜逆転を改善するために、ご家庭でできる対策方法があります。
まずは気持ちよく眠るために生活リズムや住環境を整えましょう。日中、とくに午前中に散歩などをして太陽の光を浴びると、体内時計が刺激されて昼夜のリズムがよくなります。外出しなくても、朝着替えて自室からリビングに移動して、食事をすることも効果的です。そのとき、カーテンを開けるなどして部屋を明るくしましょう。
眠りやすい環境づくりも大切です。暗いと恐怖感が強くなって眠れない人がいます。その一方で、明るいと眠りにくい人もいるので、その人に合わせた環境を作ることが大切です。寝るときに手足が冷たいようなら靴下や寝間着で暖かくするとよいでしょう。
湯たんぽを使用する場合は、低温やけどに十分注意する必要があります。
認知症の方は、家族の関わりが行動心理症状(BPSD)につながります。それは睡眠のリズムにも影響を及ぼします。本人は認知症状によって精神的にストレスを抱え込みやすいので、症状があっても安心して暮らせる環境を整えることが大切です。
また、眠れずに混乱している認知症の方への対応も重要です。「寝なさい」と抑制的な態度で接してしまうのは逆効果になってしまいます。強引に寝かしつけようとするのではなく、本人に寄り添うような対応を心掛けましょう。
ただし、ご家族の方もストレスを溜め込んでしまわないように気をつける必要があります。ご家族の介護負担を軽減するためにも、日中はデイサービスなどの介護サービスを利用するのも一策でしょう。介護の専門家によるサービスなのでご本人にとってもご家族にとっても安心な上、デイサービスを利用することで日中の活動量が増え、程よい疲れで夜間にぐっすり眠れるといった効果も期待できます。
グループホームでの認知症ケア
グループホームとは、要支援2〜要介護5までの認知症と診断された高齢者の方を対象に住み慣れた地域で家庭的な環境のもとスタッフのサポートを受けながら共同生活を営むサービスです。認知症ケアに特化し、一人一人が有する能力に応じて自立した生活を送ることができるよう暮らしをサポートします。
認知症による昼夜逆転にお悩みの方は、近隣の地域包括支援センターや掛かりつけの病院などに相談してみてはいかがでしょうか。