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介護が必要になる前に

どんな人でも、年を取るにつれて身体機能が衰えてきます。
しかし、「もう歳だから」と言って体を動かすことができないわけではありません。
いつまでも自分らしく生活していくために、今からできることがたくさんあります。

いつまでもいきいきと過ごすために

年齢を重ねていくと、身体機能は衰えていくものです。筋力・バランス能力だけでなく、歩行機能も低下します。 しかし、年を重ねても筋力やバランス能力を維持・向上させることは可能です。「転ぶのが怖い」、「もう歳だから」といって身体を動かさないのではなく、高齢になってからでも運動習慣を身に付け、筋力の増強や柔軟性の向上を目指すことが、いつまでも自分らしく生き続けるための秘訣となります。

高齢者の心身の特徴

高齢者の心身の特徴

加齢や疾病による身体機能の低下とは、具体的にどのようなことを想像されるでしょうか。耳の聞こえが悪くなる、腰が曲がってくるといったものを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし実際には、聴力や腰の曲がりだけでなく、近くのものが見えなくなったり、重いものが持てなくなったり、さらには足の爪が変形したり、味覚が鈍感になるなど、その特徴は様々です。
また、認知症もそのうちの1つです。認知症は疾病であり、症状や発症年齢には個人差があります。必ずしも高齢者全員に見受けられるわけではないですが、多くの高齢者や介護者に関連する疾病となっています。

認知症ってどんな病気なの?

認知症ってどんな病気なの?

認知症とは、一度正常に発達した認知機能が、後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言います。
なかでも、脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状を「中核症状」といい、記憶障害や見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下などが含まれます。中核症状が原因で、周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。
本人がもともと持っている性格や素質、環境・心理状態など様々な要因が絡み合い、うつ状態や妄想のような精神症状や、日常生活への適応を困難にする行動上の問題も起こってくる場合もあります。これらを行動・心理症状(BPSD)と呼びます。
このほか、認知症にはその原因となる病気によって多少の違いはあるものの、様々な身体的な症状もでてきます。特に血管性認知症の一部では、早い時期から麻痺などの身体症状が合併することもあり、アルツハイマー型認知症でも進行すると歩行が拙くなり、終末期まで進行すれば寝たきりになってしまう可能性があります。

要介護の原因と介護予防

  • 高齢者に介護が必要になった原因を探ると、その約5割は「認知症」「高齢による衰弱」「関節疾患」「転倒・骨折」などの老化現象であることがわかります。(厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成22年)による)
    つまり、病気の直接の影響というよりも、ケガや衰弱で寝込み、運動機能が低下することで活動範囲が狭くなっていくことが要介護状態に陥る原因となっているのです。
    しかし、介護予防を目指したトレーニングや習慣的な運動によって活動量を向上させることで、若々しい生活が維持され、いつまでも自分らしく暮らしていくことが可能になります。

  • 要介護の原因と介護予防

健康であり続けるために

健康状態を維持する方法は、年齢によってさまざまです。
中年期では、生活習慣病を予防し、病気の早期発見や早期治療が大前提となります。

それに対して高齢期では、病気の予防だけでなく、危険な老化のサインを見逃さないことが1つのポイントになってきます。
高齢期になると、特に病気ではないのに生活上必要な身体機能や動作能力が低下し、生活の質を下げるような危険な老化現象が起きてきます。一見問題がないように思えるので、歳のせいだと見過ごしがちです。しかし、これがひとつのきっかけとなり、体を動かさなくなることにより、次第に要介護状態に進む可能性が高まってくるのです。
そこで高齢期では、生活上必要な身体機能や動作能力の低下を予防し、加齢や心身機能低下に伴う日常生活における危険な老化のサインをなるべく早く発見し、対処していくことが健康維持と自己実現への支えにつながっていくのです。

健康であり続けるために
こんなサインに心当たりはありませんか?
  • 自分の身の回りのことが億劫になった
  • ちょっとしたところでもつまずいて転びやすくなった
  • 不意に尿が漏れるようになった
  • 食事が単調になった
  • 物忘れが激しくなった
  • 食べ物をうまく噛むことに時間がかかる
  • 外反母趾や爪の変形で歩きにくくなった
危険な老化のサインの早期発見・早期治療が、健康維持と自己実現の支えになります。

転倒は要介護の第一歩

高齢者が転倒し、骨折してしまったがために寝たきり状態になることも少なくありません。また、一度転倒してしまうと、転倒を恐れて家に閉じこもり、足腰を弱らせ、ついには寝たきりになってしまうという悪循環に陥る可能性も否定できません。
この悪循環を回避するために、転倒を防ぐことがとても重要となります。

高齢者が転倒しやすくなる原因として、

・足が上がらない
・バランスがとれない
・身のこなしが鈍くなる

といった3点が挙げられます。
足を上げるためには、すねやももの筋肉を鍛えること、バランスをとるにはお尻や足の前・後ろの筋肉を鍛えること、また、さっと身をかわせるようになるには普段から体を動かし、運動神経をよく働かせることが大切です。

転倒しないようにするために特に重要なのは、「抗重力筋」です。抗重力筋は、地球の重力にたいして姿勢を保つために働く筋肉のことで、下腿、大腿、腹部、胸部、首の各部前後に張り巡らされ、前後互いに伸び縮みをしながらバランスを取っています。立っているだけ、座っているだけでも常に抗重力筋のどれかが緊張しているので、もっとも疲労しやすく収縮したままになりやすい筋肉と言えます。
したがって、抗重力筋を鍛えることは日常生活の身体的負担を軽減させ、転倒防止にも効果をもたらします。

転倒は要介護の第一歩

トレーニングのコツ

高齢者にとって運動することは、簡単なこととは言えません。しかし、ポイントを意識したり、適度に休憩をとったりと工夫を重ねれば、無理のない運動推進をすることができます。

筋力トレーニングのポイント

軽い負荷で長く続ける

筋肉の繊維は、細長い筋肉の束からできています。この細い繊維はゆっくり動かせば動かすほどすべての筋肉が無駄なく動く仕組みになっています。よって、負荷を少なくして長く続けることが効果的です。

戻すときはゆっくり

足を伸ばす、体を曲げるなどの動作をしたあとは、意識的にゆっくり体を戻しましょう。おもりを使って負荷がかかった場合などには急に戻すと負担がかかります。

最初は軽く、慣れたら重く

はじめは無理をせず、負荷も軽い状態ではじめましょう。基礎的な体力がついてきたら、おもりを重くするなどして、ややきつめのトレーニングに切り替えていくことが重要です。

自分のペースで

筋肉のつき方や体力は人それぞれです。無理なことに挑戦すると、能力の限界を超え、危険なこともあります。自分のペースでトレーニングを行うことが重要です。

休みも大事

筋肉は運動をすると一度壊れて、回復するときにより強くなっていきます。体を鍛えたいからといって無理に毎日続けても逆効果です。1日おきに週2~3回を目安に行うと効果的でしょう。

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