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混合介護の弾力化で介護サービスはどう変わる?

2018年03月20日

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gazou

介護保険適用内で介護や支援を行うサービスと、介護保険適用外のサービスを組み合わせて利用する「混合介護」。 すでに一定の範囲内で認められてはいますが「ルールが曖昧でわかりにくい」として、利用状況はかぎられています。 介護保険の制度改革をめぐり、注目を集める「混合介護」とはどういったものなのか、そのメリットや懸念されるデメリットなどを考えていきましょう。

介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて利用する「混合介護」

 介護サービスには、利用者が費用の1割を負担する介護保険適用内(以下保険内)のサービスと、利用者が費用を全額自己負担する介護保険適用外(以下保険外)のサービスの2種類があります。


 保険内のサービスは、入浴や排泄介助、利用者の衣服の洗濯や居室の清掃などがあります。  保険外のサービスは、介護保険では認められていないサービス全般を指し、家族のための調理や洗濯、庭の草むしりなどから、介護保険ではカバーしきれない、より高品質なサービスまで多岐に渡ります。


 混合介護とは、この両方のサービスを組み合わせて同時・一体的に受けることをいいます。  現行の介護保険制度でも混合介護は認められています。ただし、保険内のサービスと保険外のサービスは明確に分けて提供することが求められており、同時間内のサービス提供はできません。


 訪問介護で例を挙げてみましょう。


 利用者は保険内サービスとして、ヘルパーに身体介護を受けます。引き続き、リビングなど利用者の居室以外の部屋を清掃する保険外サービスを利用する場合、サービスを明確に分けるため、身体介護のヘルパーはいったん事業所に戻ってから再び利用者宅を訪れて保険外サービスを提供するか、別のヘルパーがバトンタッチで保険外サービスのために利用者宅を訪れる必要があります。


 これでは、利用者だけでなく事業者にとっても非効率で、利便性が高いとは言い切れません。混合介護の弾力化(混合介護の条件の緩和)が実現すれば、上記の例の場合、事業者は保険内の身体介護サービスを行って、そのまま保険外の清掃サービスを行うことができるので、一体的なサービス提供が可能になります。


混合介護の弾力化で期待されるメリットと懸念されるデメリット

 混合介護の弾力化には、さまざまなメリットが期待されています。  たとえば訪問介護の場合、利用者は保険内サービスでヘルパーに自身の食事を調理してもらうと同時に、保険外サービスで家族の分も調理してもらったり、庭の草むしりをしてもらうなど、日常生活においてより充実した支援・サービスを受けることができます。


 介護する家族にとっては、利用額を自己負担する経済的な問題がカバーできれば、介護にかかる負担を軽減できます。特に、近年問題になっている介護離職の防止や、介護者の肉体的・精神的な介護疲れの軽減につながります。


 事業者にとっては、サービスの提供を柔軟に行えるようになり、利益の増額が見込めます。介護業界の全体的な増益は、介護職員の収入などの待遇改善につながり、介護職員数の増加が期待できます。


 そして、事業者間で健全な競争が行われれば、利用者はより質の高いサービスを手頃な料金で受けやすくなり、介護の質の向上が望めます。


 一方、混合介護の弾力化は高齢者福祉の公平性や社会福祉法人の公共性に反するという見方もあり、デメリットも懸念されています。


 所得が高い人は、より質の高い介護サービスを自費で賄うことができますが、所得が低い人は混合介護の経済的負担ができず、介護サービスに格差が生じると考えられます。


 ご家庭によっては、経済的な負担が長期に渡り続くことになり、家族の経済的負担も軽視できません。また、モラルに反した事業者が、高齢者に不必要なサービスを押し付けたり、法外な料金でサービスを提供したりする恐れもあり、判断力の衰えた高齢者が、言われるがまま高額な料金を支払ってしまうケースが懸念されます。


 さらに、保険外サービスの一部に保険内サービスを組み込めば利用者の負担は軽くなるため、必要以上のサービス利用が増えることも予想されます。そうなれば、結果的に保険給付費が膨れ上がり、現役世代の保険料負担に拍車がかかることも危惧されます。混合介護の弾力化に関しては、有識者の間でも意見が別れており、手放しで歓迎されているとは言い難いのです。


東京都豊島区で2018年度からスタートする混合介護のモデル事業に注視を

 上記に挙げたような混合介護の弾力化によって生じるメリットやデメリットについて、各方面ではさまざまな議論がなされています。


 そんな中、いよいよ2018年度から、東京都豊島区が国家戦略特区という仕組みを活用し、混合介護のモデル事業を開始する予定です。まずは在宅介護者のニーズを見込み、訪問介護を軸に保険内サービスと保険外サービスを一体的に提供。対処すべき課題や適切な運営方法を探っていきます。


 保険外サービスは月毎の定額制とし、利用時間には一定の上限を設定。豊島区内の事業所を対象に、契約書で利用者保護に関する規定を整備し、苦情などに対応する相談窓口を設置する考えも示されています。


 モデル事業では、趣味のサークル参加やショッピングといった自費での外出支援を柔軟に組み合わせる形を試し、見守りのためのICT機器を上乗せ料金で導入・運用するサービスも試行します。


 これらの取り組みは、根強い懸念の声を解消し、規制緩和による介護サービス内容の拡大につながるのでしょうか。豊島区のモデル事業の行方を注視した上で、混合介護の規制緩和に関しては今後も慎重に検討し、議論を重ねていく必要があります。


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