職員が情報を共有し、介護計画の根拠となっているアセスメント(情報収集)を意識し、ケアが統一されることで、認知症のお客様が快適に暮らせるのではないかと考えました。
1. アセスメントに対する職員の意識を前後でアンケートし、アセスメントに対する職員の意識の変化を対比しました。
2. 職員の変化に伴って、お客様の不適応行動が変化するのか、一人のお客様の事例を通して対比しました。
アセスメントを十分に理解している職員が少なかったことから、施設で使用しているアセスメントシート(情報収集シート)を使用して、全員が個々にA様のアセスメントを行いました。
その結果、入浴が行えていない現状は把握されていますが、その原因に繋がる分析がなく、不適応行動の要因は掴めませんでした。
そこで、フロアの全職員で不適応行動の要因についてカンファレンスを行い、検討しました。
すると、カンファレンスで職員からA様の入浴拒否場面での情報が色々と集まりました。
➀多くの職員はA様の入浴拒否に関して、「A様はもともとお風呂が嫌いなんだろう」という思い込みと「認知症により、入浴の必要性が理解できないのだろう」「入浴の習慣がなかったからではないか」と、それぞれが、勝手な判断をしており、A様に対する声かけもバラバラでした。
②A様は、職員に入浴を強いられるストレスを感じ、職員は思い通りにケアが行えていないストレスをそれぞれが抱えている状態でした。
そこで、フロア職員全員で不適応行動の要因についてカンファレンスを行い検討しました。
すると、カンファレンスで職員からA様の入浴拒否場面での情報が色々と集まりました。
「こんな昼間から風呂なんぞ入れるか。」「今日は仕事もしとらんし、風呂なんか入らんでええ」などの発言があることがわかりました。
A様の口から発せられる言葉は、それを聞いた職員しか知らない、共有されていない情報でした。情報が共有されていないことがわかったことから、A様中心のケアを行うには、職員全員が情報を共有することが大切だと気づきました。
更に「得た情報をどうやって職員全員が共有すればいいのか?」さらに、「どんな情報を獲ればいいのか?」という疑問の声が、職員から挙がりました。
そこで、A様の入浴拒否の理由を知る為に、フロア職員全員が、再度アセスメントを行いました。A様の新たな情報として、
1. 「今日は仕事もしとらんし、汚れもないし、風呂なんて入らんでええ」
2. 「昼間っから風呂に入るなんて近所の人に笑われるでやめとくわ」
3. 「人の世話になるつもりなんかない」
4. 「物騒な気配がするから、店の戸締りしてくるわ」
との発言がありました。
また、A様は夜間、部屋にバリケードを作り、他者の侵入を許さない状況であり、巡回のために職員が訪室することを怖がっていた様子がみられ、職員に対する不安や警戒心がみられました。
A様は、
1. 職員や施設に対して、不安や警戒心があるのではないか?
A様と信頼関係を築く為、このような取り組みを行いました。
まず、リビングをお店と思っているA様に、リビングで声かけすることから始めました。
入浴を促すことなく世間話などをして、関係性を築きました。A様は、電化製品が気になる様子だった為、脱衣所の洗濯機を見ていただくという名目で、脱衣所に誘導しました。入浴目的ではなく浴室を案内すると、「広い風呂やな~足を伸ばしては入れるな」と抵抗なく浴室に入っていかれました。
②以前の職業である、自転車屋の商売中であると思っているのではないか?商売中でいつお客様が来るかわからない。風呂になんて入っている場合じゃない。お客様がくるから、この場を離れられないと思っているのではないか?と考えました。
A様の思いを尊重したケアを行うために、自転車屋の話を積極的に会話に取り入れました。
「商売中」「お客が来る」という発言を否定せず、「お仕事疲れたでしょう」と声をかけ、仕事で疲れた体を休めてもらうアプローチを行いました。
また、施設の中で普段ソファーでのんびり過ごされていることが多いため、このことを「お店の中での店番」をしているととらえ、手浴・足浴の促しを、ソファーで行う事から始めました。
脱衣所への誘導ができた頃から、手浴・足浴を脱衣所で行う事ができるようになりました。
職員のアセスメントの意識が変わり、ケアが統一されたことにより、お客様の不適応行動が改善しました。
職員のアセスメントに対する意識が変わり、ケアを統一することで認知症のお客様の不適応行動に変化があることが、明らかになりました。アセスメントの重要性を職員が理解し、表面的な状態だけに目を向けるのではなく、ケアに対する職員の共通認識が必要であると考えます。
お客様のありのままの状態を詳細に把握し、お客様がよりよく暮らすために、お客様の視点に立ってサービス提供することが大切です。
現在のA様の様子は、職員や施設環境に対する警戒心は解かれつつあり、浴室までは拒否なく移動できるように変化しました。
手浴・足浴はソファーから脱衣場に場所を変更しても、順調に行えており、習慣化されました。
また、脱衣場にあるシャンプードレッサーを目にしたA様が「床屋の洗髪台やな」と発言されたことをきっかけに、床屋の洗髪台というシュチエーションで洗髪介助が行えるようになりました。
今回、アセスメントに対する職員の意識が変わったことで、A様に対するケアの方法が変わり、ケアが統一され、不適応行動が少しでも改善されたことは、職員の自信とモチベーションの向上に繋がりました。職員のアセスメントに対する意識が変わり、ケアを統一することで認知症のお客様の不適応行動に変化があることが、明らかになりました。アセスメントの重要性を職員が理解し、表面的な状態だけに目を向けるのではなく、ケアに対する職員の共通認識が必要であると考えます。
お客様のありのままの状態を詳細に把握し、お客様がよりよく暮らすために、お客様の視点に立ってサービス提供することが大切であると考えます。