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ニチイケアセンター藤心

とある写真の偶然遭遇(セレンディピティ)

2025/05/02 更新

入居者の岸田さん(仮名)。元新聞社勤めというわけでもないだろうけれど、若い頃からの写真をたくさん持っている。学生服姿、スーツにネクタイ、旅行先のくつろいだ感じとさまざま。それらが部屋のクローゼットの中、袋に順不同で詰め込まれている。
ある日、岸田さんとそれらの写真を見ながら、これはいつ頃? これはどこ? と話をしていた時。裏に日付と場所が書かれているものもあり、岸田さんも「そうだね、これはねぇ」と話をしてくれる。そして、ある一枚の写真。中学の修学旅行らしい集合写真。その日付を見て私は思わず「うわぁ」と声を上げてしまった。
「この写真、私が生まれた日ですよ」
六十数年前、私がこの世にオギャアと生まれた日、岸田さんは中学の同級生たちと写真を撮っていた、ということ。もちろん、その日に生まれた人はたくさんいるだろうし、だからどうしたということもないのだが、その時限定のちょっとした特別感があった。
他人にはなんでもない写真がその人にとって大切な一枚ということはよく聞く話だ。その逆に、その人からすればありきたりの古い写真でも、見た人が何か違ったものを感じるということもあるのだろうか。
私は山のようにあった写真のほとんどを、これは残しておきたいと感じたもの以外は数年前に処分してしまった。そのこと自体には後悔はない。それでも、遠くない未来、もし私がどこかの施設に入居した時に、処分した写真の中にはこんな偶然に遭遇する一枚があったのかもしれないと思った。
今、古い写真(その他いろいろ)を処分しようとしている人がいたら、ちょっとだけ待ってみるのもいいだろう。捨てるのはいつでもできるのだから。

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